令和彩日記 -Reiwa Saijitsuki-

令和元年、30歳をむかえた女の日々のひとりごとの記録。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』ー各々の心に仕舞い込んだ、心の奥底の繊細な「宝物」の表面に直接的でなく触れ、撫でるような物語

2019.8.10(土)

長年大好きで大好きでTwitterを追いかけていた、今わたしが知る限りで一番わたしが好きなもの書きの、燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』を読了した。

 

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cakesの時代から追いかけていた。初めて、ふとしたきっかけで(たぶん、タイトルに惹かれたのだと思うが)彼の文章を読んだときに、「こんなエモい文章を書く人がいるんだ」(※当時、「エモい」なんて表現の使い方はわたしの中であまり知らなかったし理解していなかったし、使わなかったのだけれど、今風に置き換えればそういうこと、そういう感覚だと思う)と感じた。

それ以来、大ファンだ。まだまだ拙い文章読み経験だけれど、それでも、わたしのこれまでの人生で読んできた文章の中で、わたしが知る限り、

彼ほど、人の心の機微を、うまく言葉では汲みきれない、なんと言い表したらいいかわからない心の動きを、

まわりの情景やシチュエーション、細かな、まるで細い細い筆の先で一本一本丁寧に描いた風景画の一つ一つの線のような表現力で、

文章の中にありありと描き出す存在を、他に知らない。

 

涙が表面張力で「うるっ」となるのを、読み進めながらいく度も感じた。それでも、最後のページでは、こらえきれず泣いてしまった。

途中までは、ひたすらな切なさだけがわたしを襲った。けれど、最後のページには「救い」があった。

 

自分よりもただ一人、愛してしまったその「中肉中背で三白眼でアトピーのあるブス」が、自分の心の中に一定の居住区を占め、ずっとずっと苦しさや悔しさ、青さや切なさ、 *1の感情とともに、日々波はあれど「ボク」の中のある程度を占領して離さなかったその彼女が、

現代のSNSやインターネットの狭く無限大で不確かな世界へと蠢いていった「ボク」の日常の中で、とあるひとつの偶然から「さよなら」が言える存在へと昇華していった、

そういう、「ボク」の諦めとともにあるーーため息や驚嘆にも似た、卒業と希望のある、未来へ踏み出す第0歩の物語なのかな、と感じた。

 

さいごの、「ありがとう。さよなら」と、ラブホテルのフロントからの、「チェックアウトの時間を告げる電話」が重い。かさなる。

 

 

たしか、cakes、そして文庫版では、文章の総量も、ましてや順番さえも、異なっていたはずだ。

人間誰しも、いかに青臭くても不器用でも、”最初に出したもの”に本音だったり、本気の熱量やらがある程度籠るものだと思う(だから、青臭いとわかっていながら、このブログも一発書きしている。あとで直すかもしれんけど)。

だから、わたしがcakesを初めて読んだころにグワッと感じたような、瑞々しいまでの、草いきれにも似た強烈な「エモさ」はそこにはなかった。

けれど、でも、1つの「作品集」、「文学の作品」としてまとまり、個々の文章が一群をなすところに、このストーリーの真骨頂ともいうべき、誘導されて初めて達せられ、感じることのできる、本の1読者としての”エモさ”がある。

 

初めて読み切った、燃え殻氏の『ボクたちはみんな大人になれなかった』。

 

号泣すると話題になっている今流行りのアニメ映画より、最近読んだどの短編漫画より、

ここ最近目にしたありとあらゆる思索のヒントになる記事の数々より、

どれよりも良かった。

 

ぜひ、本当に一定の誰かではなくほんとうの意味での「みんな」に薦めたい。特に、今現在の「日本」に暮らす「みんな」に。10代の方よりも、20代半ばとか、それくらい以降の、「何かを諦めてしまった大人たち」に捧げたい。

ほんとうに、わたし自身はこの本の一文たりともを書いていないのに、1読者として読み終えたあとは、そういった方々に”捧げたい”。語り合いたいというよりも、読んで、それぞれの心の中に、あまりひとには触れられたくないまま大切にしまい込んでいる宝ものを、この小説を通してそっと取り出し、愛で、慈しんでこれまで以上に丁寧に、梱包の形を必要に応じて変化させながら仕舞いなおして欲しい。

 

そんな風に思える、素晴らしい、emotionalな小説でした。星5つ。

 

https://www.amazon.co.jp//dp/4103510110

https://cakes.mu/series/3635

 

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*1:今ならもっと…